「1ロット」に共通の定義はない。通貨単位と1目盛りの金額から数えよ|2026年9月版
「1ロット入れた」で通じ合っているつもりなら、まだ甘い。その言葉は量を指していない。数えるべきは通貨数と、1目盛りが何円かだ。

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掲示板でも動画でも、「1ロット」「0.1ロット」という言い方が飛び交う。だが、その言葉は量を指していない。会社が変われば指す通貨数が変わり、同じ会社でも通貨ペアで変わることがある。
結論を先に置く。数えるべきはロットではなく、通貨数と、1目盛りが何円かの二つだ。この二つが出れば、1円逆行したときの損失も、許容損失から逆算できる建玉の上限も、暗算で出る。この記事では、東京金融取引所が公表している実数だけを使って、その数え方を叩き込む。
取引単位は、同じ取引所の中でも割れている
ロットという語に業界共通の定義はない。取引所FXであるくりっく365でさえ、商品概要は取扱通貨単位を「1万通貨・10万通貨」と両方掲げている。どちらになるかは通貨ペアで決まる。
米ドル・円、ユーロ・円、英ポンド・円、トルコリラ・円などは1万通貨。南アランド・円/メキシコペソ・円/ノルウェークローネ・円/香港ドル・円/スウェーデンクローナ・円/ハンガリーフォリント・円/チェココルナ・円は10万通貨だ。同じ取引所の同じ商品群で、単位が10倍違う。
1目盛りの金額は、通貨数と刻み幅の掛け算で出る
東京金融取引所は商品詳細で、通貨ペアごとに「刻み幅」と「最小変動幅相当」を公表している。刻み幅は価格が動く最小の単位、最小変動幅相当はそれが1枚あたりいくらになるかだ。
| 通貨ペア | 取引単位 | 刻み幅 | 最小変動幅相当 |
|---|---|---|---|
| 米ドル・円 | 1万通貨 | 0.005 | 50円 |
| 英ポンド・円 | 1万通貨 | 0.01 | 100円 |
| 中国オフショア人民元・円 | 1万通貨 | 0.001 | 10円 |
| 南アランド・円 | 10万通貨 | 0.005 | 500円 |
| ハンガリーフォリント・円 | 10万通貨 | 0.001 | 100円 |
| ユーロ・米ドル | 1万通貨 | 0.0001 | 1米ドル |
掛け算はそのまま合う。1万通貨に0.005を掛ければ50円、10万通貨に0.005を掛ければ500円。公表値は自分で検算できる。表の数字を鵜呑みにするな、電卓を叩け。
米ドル・円 10,000 × 0.005 = 50円
英ポンド・円 10,000 × 0.01 = 100円
南アランド・円 100,000 × 0.005 = 500円
ここでpipsという言葉に触れておく。取引所が公表しているのは刻み幅と最小変動幅相当であって、pipsという単位ではない。対円通貨ペアで1銭を1pipsと呼ぶ言い方は市場で広く使われているが、これは慣用であって取引要綱の用語ではない。米ドル・円の刻み幅0.005は0.5銭にあたる。「何pips」で会話していると、こういう半分刻みの相場で数え間違える。
クロス円以外は、1目盛りが円で出てこない
表の最後の行を見よ。ユーロ・米ドルの最小変動幅相当は1米ドルと書かれている。円ではない。英ポンド・米ドルも1米ドル、米ドル・スイスフランは1スイスフラン、米ドル・カナダドルは1カナダドルだ。
これが何を意味するか。ユーロ・米ドルで10目盛り取れたとき、それが日本円でいくらになるかは、その時のドル円次第で変わる。1ドル159円なら1,590円、1ドル150円なら1,500円。同じ値幅、同じ枚数でも、円建ての損益は動く。クロス円しか触ったことのない者が、ここで見積もりを外す。
必要証拠金は左側の通貨で決まる
そもそも必要証拠金の下限は取引額の4%と定められている。金融庁はこの率を「1日の為替の価格変動をカバーできる水準を証拠金として確保することを基本」とした措置だと説明している(金融庁 2009年7月31日 報道発表)。金融先物取引業協会の細則も、必要証拠金額を「取引において会員が顧客に預託させる最低証拠金額」と定義する(同協会 ロスカット取引関係の細則 第2条第4項)。
建てるのに必要な金額は、通貨ペアごとに桁が違う。2026年9月7日から9月11日までの週の為替証拠金基準額を並べる。
| 通貨ペア | 為替証拠金基準額(2026年9月7日〜11日の週) |
|---|---|
| 米ドル・円 / 米ドル・スイスフラン / 米ドル・カナダドル | いずれも63,780円 |
| ユーロ・円 / ユーロ・米ドル / ユーロ・英ポンド / ユーロ・豪ドル | いずれも74,270円 |
| 英ポンド・円 / 英ポンド・米ドル / 英ポンド・豪ドル | いずれも86,740円 |
| 豪ドル・円 / 豪ドル・米ドル | いずれも45,730円 |
| トルコリラ・円 | 1,330円 |
並べると規則が見える。右側の通貨が何であっても、左側が同じなら基準額が同じだ。ユーロ・円もユーロ・米ドルも74,270円。必要証拠金は左側の通貨の量に対して計算されている。ちなみにスワップポイントのほうは、左右どちらの通貨の金利も効いてくる。
そして米ドル・円の63,780円とトルコリラ・円の1,330円を比べれば、約48倍の開きがある。「1万通貨だけ建てた」という言い方が、資金の重さを何も表していないことがこれで分かる。
許容損失から逆算し、必要証拠金で頭を打つ
ここまでの数字を、実際の建玉の決め方に落とす。1回のリスクは口座資金の2%までという掟に従い、口座50万円で米ドル・円を建てる場面を想定する。
損切り幅を0.20円(20銭)に置く
1万通貨あたりの損失 = 0.20 × 10,000 = 2,000円
建ててよい量 = 10,000 ÷ 2,000 = 5万通貨
ここで止まるな。5万通貨を建てるのに必要な証拠金を出す。
評価損益ゼロのときの維持率 = 500,000 ÷ 318,900 = 157%
許容損失の計算では5万通貨まで許されたのに、証拠金を入れた瞬間に維持率は157%まで落ちる。2%ルールを満たす量と、余裕を持って持てる量は別物だ。損切りが機能する前に強制決済が来る建玉は、リスク管理として成立していない。維持率の読み方は証拠金維持率の実計算で扱っている。
両建ては安くならない。だが二重にもならない
売りと買いを同時に持てば証拠金が倍かかると思っている者がいる。金融先物取引業協会の証拠金規制の説明では、同一通貨ペアで対当する建玉がある場合、売りと買いの取引額を比べて多いほうを基準に必要証拠金を算出できる。同協会が挙げている例をそのまま引く。
ただし通貨ペアをまたいだ相殺は認められていない。同協会は、ユーロ・円の1万ユーロ買いとユーロ・米ドルの1万ユーロ売りを米ドル・円の買いとみなして計算する方式(BOE方式)は認められないと明記している。「あくまで同一通貨ペアで対当する建玉がある場合に限り」というのが条件だ。
一枚という言葉に、量は宿らない。量が宿るのは、通貨の数と、一目盛りの重さだけである。
道場の心得:ロットで話すな、通貨数で話せ
三つに凝縮して叩き込む。
- ロットではなく通貨数を言え。取引所FXでも取引単位は1万通貨と10万通貨に割れている。単位が違えば、同じ数字が10倍の意味を持つ。
- 1目盛りの金額を先に出せ。取引単位×刻み幅で出る。米ドル・円は50円、南アランド・円は500円、ユーロ・米ドルは1米ドルだ。
- 許容損失で出した量を、必要証拠金で検算せよ。50万円で5万通貨は2%ルールを満たすが、維持率は157%まで落ちる。二つの計算を両方通せ。
よくある問い
- 1ロットは何通貨か。
会社によって違う。取引所FXのくりっく365でさえ、取引単位は通貨ペアごとに1万通貨と10万通貨に分かれている。米ドル・円は1万通貨、南アランド・円やメキシコペソ・円は10万通貨である。ロットではなく通貨数で数えよ。
- 1pipsはいくらか。
通貨ペアと取引単位による。東京金融取引所が公表しているのは「刻み幅」と「最小変動幅相当」である。米ドル・円は1万通貨・0.005で50円、英ポンド・円は1万通貨・0.01で100円、南アランド・円は10万通貨・0.005で500円と示されている。ユーロ・米ドルは1万通貨・0.0001で1米ドルであり、円では出てこない。
- 必要証拠金は通貨ペアごとに違うのか。
違う。2026年9月7日からの週の為替証拠金基準額は、米ドル・円が63,780円、トルコリラ・円が1,330円だった。約48倍の開きがある。一方でユーロ・円とユーロ・米ドルはどちらも74,270円で同額であり、必要証拠金は左側の通貨の量で決まっている。
- 両建てにすれば必要証拠金は倍になるのか。
ならない。金融先物取引業協会は、同一通貨ペアで対当する建玉がある場合、売りと買いの取引額を比較して多い額を基準に必要証拠金を算出できると説明している。ただし異なる通貨ペアを組み合わせて相殺する方式は認められていない。
まずは自分が普段触っている通貨ペアについて、取引単位と刻み幅を取引先の資料で調べよ。掛け算して1目盛りの金額を出す。そのうえで、許容損失から建ててよい通貨数を逆算し、必要証拠金で検算する。今日の稽古は、そこから始めよ。